法人紹介

第1章 育児で大切なこと

1-4 ねえ、見て!見て!

夏本番を迎え、どろんこ遊び、プール遊びと、この季節ならではの遊びに子どもたちは笑い転げています。「見て!」「先生見てて!」「ぼくも見てー!!」一日に何回この言葉を掛けられることでしょう。水に顔を漬けることができるようになった子、じょうろからこぼれる水をうれしがる子、ワニ泳ぎの得意な子、などなど。

 

一人一人の「見て!」に拍手で応え、「上手になったね」と声を掛け、褒めてあげます。子どもの「見てほしい」「私の方を向いて」「認めてほしい」の発信は、子どもが誕生間もないころから周囲の大人に”愛される″ことを必要不可欠とする存在だからです。大人から見ればほんのささいな事でも褒めて認めてもらった事実は、生涯心の栄養となって残るでしょう。

周囲の大人に「大切に思ってもらえる」「存在を喜んでもらえる」と感じ、子ども自身が「自分はここにいても良い存在なのだ」「生きていていいのだ」と尊厳を持って生きていけるのです。

 

先日、かかりつけの内科医院の待合室で出会った光景です。2歳くらいの男の子が「ママ読んで、ご本読んで」と備え付けの絵本を差し出していました。お母さんは、ご自分の読書に夢中で全く顔を上げません。男の子は何度も声を掛け、お母さんの体を揺すっていましたが、とうとう「静かにしなさい!」と一喝され、黙ってしまいました。私は胸が痛くなり、(どうか今回限りの出来事でありますように)と祈らずにはいられませんでした。

かつて重い障害を抱えたお子さんを育てている友人が「一生に一度でいいからママと呼んでほしい」と話していた言葉を思い出しました。彼女ならきっと世界一の優しく柔らかな声で応えるでしょう。「なあに?」