法人紹介

第1章 育児で大切なこと

1-3 乳児と「よく」かかわる

子どもは、生まれた時から両親だけでなくいろんな人々にかわいがられ、温かな人間関係の中で育っていくものです。

家庭では、お母さん、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃんがいても、この時期のかかわりは、特に母親が対象になるのが普通です。母親の優しい声掛けに声を発したり、ほほ笑みを返したりするのは、日常生活の中で母親がよくかかわっているからです。

では、保育園ではどうでしょうか?母親と同じように乳児とよくかかわることになるのは保育士です。乳児は、自分の世話をしてくれる保育士の心地よい声や、手触り、肌触りを通して、母親にかかわってもらってる時と同じように声を出したりほほ笑んだりすることが多くなってきます。自分を愛し、世話をしてくれる人の思いが分かるようになるのです。「おむつは取り替えたし、ミルクでおなかいっぱいになればそれで気持ちよくなるはず」と言う方もいますが、これはちょっと違うのではないでしょうか?乳児期に大切なのは、周囲の大人からの温かい笑顔と丁寧なまなざしであって、乳児から発信される″してほしい気持ち″をすべて受け入れてくれる人がいてこそ、″ヒト″から″人″へと発達していくのです。

今は、保護者が保育園を選べる時代です。でも乳児は保育士を選ぶことはできません。楽しく優しい気持ちで乳児とかかわる保育士と、手早くミスなくではあるが、無表情で機械的な気持ちでかかわっている保育士とでは、乳児との心のふれあいに大きな隔たりが生じます。自分では運命を切り開く事も選択することもできない乳児に与える大人の影響はとても大きなものだと思います。生まれて間もない乳児は、自らの欲求に優しく応えてくれた大人の品性を感じ取って、人の存在を感じるようになります。

″乳児とよくかかわる″ということは、乳児から発信されるサインを見落とさず理解し、応え、美しい響きの声、笑顔、柔らかな声掛け、心が通じ合う抱っこなど、すべてのかかわりが良質のものでなければなりません。保育士は、乳児の″してほしい気持ち″を受け止め、今日も一緒にうれしく面白く過ごそうという気持ちで一日を始めるのです。

夕方、お迎えにいらしたお父さん、お母さんにお返ししてから、「今日の私は子どもを深いまなざしで見つめていたのかしら?」と、自分の心に日々問い掛けているのです。